在職老齢年金制度で年金がカットされない収入ライン
定年後も仕事を続ける方は多いですが、「年金をもらいながら働くと、年金がカットされるらしい」と聞いて不安に感じていませんか?
年金が減額される仕組みが「在職老齢年金制度」です。この制度を理解せずに働くと、せっかく稼いだお金が年金カットで相殺されてしまう、「働き損」になる可能性があります。
この記事では、在職老齢年金制度の仕組みと、年金が全額支給される「収入ライン」を分かりやすく解説します。
在職老齢年金制度とは?
在職老齢年金制度とは、老齢厚生年金を受け取っている方が、会社に勤めて厚生年金保険に加入しながら働く場合に、給与と年金の合計額に応じて年金の一部または全額がカットされる仕組みです。
老齢基礎年金(国民年金の部分)は、この制度の対象外なので、働くことで減額されることはありません。
カットの対象となるのは老齢厚生年金の部分だけです。
年金がカットされる「基準額」はいくら?
年金がカットされるかどうかを決める基準額は、2025年10月現在、47万円です。
これは「年金月額」と「給与の月額相当額」を合計した金額です。
この合計が47万円を超えると、超過額に応じて年金がカットされます。
🔹 基準額の計算式
年金がカットされ始める収入ラインは、以下の通り計算できます。
基準額 (47万円) = 基本月額 (年金) + 総報酬月額相当額 (給与)
- 基本月額(年金):年金の老齢厚生年金の部分を12で割った1カ月あたりの額。(加給年金は含まない)
- 総報酬月額相当額(給与):直近1年間の給与と賞与の合計額を12で割った額に、標準報酬月額を加えて計算した、給与の月額相当額。
ざっくり言えば、毎月の給与(標準報酬月額)と直近1年の賞与の平均額を足したものとイメージしてください。
年金がカットされない「安全ライン」シミュレーション 📊
あなたの老齢厚生年金の月額によって、年金がカットされない給与のラインが変わります。
| 老齢厚生年金月額(A) | 年金がカットされない給与ライン(B) | 合計額 (A+B) | 減額の有無 |
|---|---|---|---|
| 5万円 | 47万円 – 5万円 = 42万円 | 47万円 | なし |
| 10万円 | 47万円 – 10万円 = 37万円 | 47万円 | なし |
| 15万円 | 47万円 – 15万円 = 32万円 | 47万円 | なし |
| 20万円 | 47万円 – 20万円 = 27万円 | 47万円 | なし |
年金月額と給与の月額相当額の合計が47万円以下であれば、あなたの年金(老齢厚生年金)は全額支給されます。
4. 年金がカットされる場合の「減額ルール」
合計額が47万円を超えた場合、年金がどれくらいカットされるかは、以下のルールで計算されます。
年金カット額(月額) = (総報酬月額相当額 + 基本月額 – 47万円) ÷ 2
つまり、47万円を超えた額の半分が、老齢厚生年金の月額から差し引かれて支給されます。
💡 例:合計額が51万円だった場合
- 超過額:51万円 – 47万円 = 4万円
- 年金カット額:4万円 ÷ 2 = 2万円
この場合、老齢厚生年金の月額が15万円だったとしたら、2万円がカットされ、13万円が支給されることになります。
5. 「働き損」を避けるための対策
60歳以降も賢く働くために、以下の対策を検討しましょう。
- 給与ラインの調整:勤務時間を調整し、給与の月額相当額と老齢厚生年金月額の合計が47万円を超えないように、雇用主と相談して給与設計を行う。
- 年金受給開始の繰り下げ:給与が高い場合は、年金の受給開始を繰り下げ(70歳や75歳)て年金を増額し、働かなくなった後で受け取るようにする。この場合、在職中の年金カットの心配はなくなります。(ただし、年金がもらえない期間の収入源は確保が必要です。)
- 自営業(個人事業主)になる:在職老齢年金制度の対象は厚生年金加入者です。
退職して個人事業主として働く場合、老齢厚生年金はカットされません。
年金制度は複雑ですが、ご自身の年金額と給与を把握し、47万円のラインを意識することで、賢く年金を受け取りながら働き続けることができます。

